留学エージェントから送られてきたステイ先の紹介文・・・ステイ先はパリ市街17区。1匹の子犬とくらす一人暮らしのマダム。何々… リッチソーシャルライフ!?…
以前はファッション業界にいて、趣味はミュージアムにコンサート、ファッションショー… それは、心に抱くパリでのくらしそのものを予感させた。
異国でくらしてみたい。
そう思って日本を飛び出して、半年間のホームステイ。フランスでの日々に題名をつけるなら迷わずつける・・「パリ、マダムと私のくらし」そのくらい滞在先のマダムの印象は鮮やかだった。
一緒に過ごしたパリのマダムとの日常、感じたパリジェンヌの生き方。
あこがれの地パリだけれど、くらして触れて感じるパリは少し想いとは違ってた・・
華やかなイメージのパリ。リタイア後の日々を豊かに過ごすマダムの・・・
“好きな街パリ” での幸せな生き方の秘密を一緒に探ってみませんか。
異国での感じ方
やっと着いたパリの街。
異国にいくとちがう空気と気配、知らないすべてに心がワクのだけれど、ここパリでは1日目から大失敗!!
フランス人って・・・??? 強力なパンチをうけた到着したあの日のことは忘れない。
まさか「換気扇のスイッチを消し忘れた」からとあんなにも怒鳴られるなんて。
初級レベルはマスターしたはずのフランス語も、まくしたてられるフランス語は耳元を通り過ぎるだけ。
だけど怒っていることだけはものすごく伝わった、、
親じゃない誰かに、あんなにも面と向かって感情をぶつけられたのは初めてかもしれない。
確かにフランス語で「お風呂からでたら、電気のスイッチを消してね、換気扇もよ」って言っていた。ちゃんと消さなきゃ・・ すぐに消えない換気扇に何度かスイッチを繰り返し押してしまったのだ。
けれど渡仏して1日目の朝に、言葉も十分でない留学生にもっと優しくしてくれたって、、
そんな気持ちってこっちの人はないのかな? あったとしてもその時の感情をストレートに出してくるのがマダム。いやフランス人の気質なのだ・・
それは後にも、一緒に暮らすなかでより感じていくことになる。
異国では、いつもとは違う人・違う感覚に出会うから、日本でのふつうがふつうじゃなくなる。
「あっ、知らない間にひとつの枠のなかで生きているんだ」と気づいたり・・・
異国への旅は、日々を生きている “いつもの日常” にほろ苦い”スパイス” をくれる。
パリのマダムと異国のくらし
仕事を辞めてまで留学したのは、ただ異国に住んでみたかったから。旅行ではなく暮らしてみたかったからだ。
留学先はたまたまその時に興味のあったフランス。パリの素敵な街並みやクロワッサンの朝食、おしゃれなパリジェンヌ・・そんなイメージ。
だけど実際のパリジェンヌに感じたのは、そのままな感じ、自然体。無邪気で頑固、エレガント・・そして以外にも質素。
マダムのくらしも週に一度はリッツでお茶、ラデュレでマカロン… 月に一度はお気に入りのシャネルでおしゃれして舞台をみたりと… ゴージャス。だけど普段の暮しはとても質素だ。
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朝のカフェや、パンを買う店、種類や量にスライスまで決まっていて、お店の人とも顔なじみ。パンに塗るのはいつものスーパーのマーマレイド。
その1センチにもみたない薄いスライスを・・「朝何マイ食べるか」ときかれたので「4枚」と答えらたら驚かれた。フランス人の朝食は一般に簡単らしい。
クロワッサンをカフェオレに無造作につっこんで食べる紳士の姿に、”カフェオレとクロワッサン” はホントなんだと驚いたけど・・・朝はさっとカフェですませる人も多いのだ。
日曜日には、近所のマルシェでチーズや肉、新鮮な食材も買うけれど、普段の食事は冷凍食品が食卓にあがる。
そしてこれが中々美味しい、、、 スーパーのブイヨンなどスープストックも中々のお味で、加工品にこそ美の国の味が出る?とも思ったり。
元々ヨーロッパは冬が長く加工品が主流、だからソースなんかも発展したんだとか。
他の学生も言ってたけれど、冷凍食品はフランスの食卓ではかなりの確率で登場するようだ。一般的なアパートメントでもシンクも小さめ。キッチンはかなりコンパクト。
グルメなパリのイメージだけど、普段の暮しにはゴージャスさは感じない。少なくとも、高級なものを食べたり “特別に食に気を使っている” ってことはないはず。
逆に狭いキッチンでも、少しの食材で上手に盛り付けたり、テーブルセッティングして食事の時間が楽しんだり、食卓はいつもさっと美しく整えられるところに、パリらしさを感じたりしたものだ。
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けれどバカンスだけは、やっぱりリッチ。マダムはリタイア後ひとり暮らしなのだけど、バカンスは夏のベネチア、モスクワにも行ったとよく旅行の写真をみせてくれた。
マダムと知人とのお茶に連れられて、そこでの話題に耳を傾けてみると・・おしゃべりに花の咲くのは、やっぱりバカンスの話。
フランス人にとってバカンスは何か特別な感じだ。”みんなが夏休みが楽しみでたまらない” そんな、大人でさえバカンスが待ちどうしく無邪気な感じが、
食べることを、おしゃれすることを、会話することを愛する、フランス人の “人生を楽しむ秘訣” なのかもしれないな・・・
パリのマダムの幸せな生き方は・・
マダムの自慢は、所有のアパートメントの居室、小さな階段からつながる屋上のテラスだった。天気のいい日には「今日はテラスで食事するわよ」と軽やかに階段を駆けあがってくマダム。
決まって一日2回、テラスのグリーンに水をまき「今日は蕾がふくらんだ、花が咲いた」と庭の話をしてくれて・・実はその時が意見の求められることのない、一番穏やかな時間だったのだけれど。
何かと「あなたはどうなの?」と意見を求めてくるマダム。先生、学校の友達との間でも同じ。うんうんとうなづき笑みを返すだけじゃ何も始まらない、素直などとも取られない。
黙っていると「何を考えているのかわからない」と言われ、頑張って思うことを伝えてみれば倍になって返ってきて、到底たちうちできない・・
それでも自分を表していくことに価値がある。言葉が違うとか学生とかそういうことに関係なく、自分をもっていてこそ対等に会話ができるんだな。
異国、とくにこの国フランスではそんな風に感じることが多かった。
「あなたはシントーshinto神道なんでしょ」「どうして美しい黒髪をもっているのに染めるの・・?」
ふいに投げかけられる言葉にえっ?と返答にとまどうことも多かった。
倍返しを予感して、、相手の言葉をのみこもうとすると、何故何も言わないの?とはたまた叱られては質問のシャワーだ。
いつも「私はこうよ」と誇り高く言い切るマダムは心強くたくましい。
個性を尊重するフランス、討論することを楽しむパリジェンヌだからかもしれないけれど、
移り住む人の多い多国籍な街ではとくに、お互いの個を知り認めあうことは必要で、互いに知り合いながら調和する意識も自然に生まれるのではないだろうか。
コツコツと高い足音を響かせて歩く凛とした空気感をもつマダム。今もあの気品高い気配が心に残る。
個性つよく高らかに、移りゆく人と、留学生と… 調和しながら、大好きな街で今も心地よく暮らしているのかな。
憧れに近いパリのイメージも、暮らしてみるとまた違ったところから見えてくる。
暮らしはその街や人をリアルに感じさせてくれるもの。
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そこでの生活で何に喜びを感じて、どんなことを大切にしているか。パリに住んでいると、くらしを通して、そこで生活する人の幸せも感じてる気がした。
おわりに
美しい街パリに住むことを誇りに思い、お気に入りのカフェ、いつものパン、顔なじみのマルシェの店に通うこと。
いつも通りのくらしをいつも通りに。彼女のいつもの感情の起伏に反して、そのくらしぶりは穏やかだ。
感情あらわに、正直に。マダムが “自然体” でいられるのも、自分の心地よさを知っているくらしのベースがそこにあるからかもしれない。
パリの滞在で、誰よりも怒って誰よりも心配し側にいてくれたマダム。彼女らしさを前面に感じる裏には穏やかなくらしがあったから。
くらすことは生きること。華やかなパリの街だけど、自分らしく”個”でいられる「愛するその地でのくらし」にこそ魅力のある街。
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異国の地パリでの強力なスパイスは、幸せな生き方・・心豊かに生きる心地よさを感じさせてくれた。
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